このブログを書いている現地時間:2018/12/11の午後6時(バンクーバーは午後3時)時点で、身柄を拘束されたファーウェイのCFO・Meng Wanzhouさんの保釈審査がバンクーバーで再開されたのち、保釈が決定しております。

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(保釈審査の状況。BBC Newsサイトより。)

現地の情報では、Mengさんの弁護士は彼女がカナダ国外に逃亡する恐れが低いこと、夫であるLiu Xiaozongさんも、保釈金として1500万カナダドル(約12億円)を支払う意思があり、且つ保釈されたのち、Mengさんの身柄を保証(多分一緒にカナダに残って裁判をきちんと受けさせる、という意味でしょう)と言っていたようです。また弁護側は他にも計4人の身元引受人を提示して、何とか保釈させようと動いていました。


が、裁判所はまず、夫であるLiuさんのカナダ滞在ビザがTemporary Visa、つまり観光ビザとかの短期ビザでの滞在という点に注目。言い換えれば、Liuさんは合法的にカナダに長期間滞在するVisaを持っていないんです。そのような状況でMengさんの身元引受人になることが果たして正しいのか、その点を疑っていたようです。さらに、いったん保釈すれば、カナダ国外に逃亡する可能性は決して低くない、と検察側が訴えて、保釈しないように求めています。

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(夫であるLiuさん。CBCニュースサイトより。)

が結局は保釈が決定・・・。何か裏取引とかあったのかな??

ただ、
本当にMengさんがカナダに留まるかは不明だと思いますよ。だって、中国領事館に逃げ込む可能性もありますし、中国政府当局自身が彼女を何とかしてカナダ国外に出国させようとするかもしれませんしね。まだまだ波乱がありそうな予感・・・。

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(とりあえず保釈されたMengさん。CBCニュースサイトより。)

今回の件に関して、駐カナダ・アメリカ大使のKelly Craftさんがコメントを出し、今回の件については「政治的な意図は全くない」としております。つまり、純粋に「犯罪行為に対する逮捕要求・身柄引き渡し要求」なんだそうです。


でもこれも、額面通りに受け取る人はいないでしょう・・。どうしても「米中経済戦争」と絡めてみてしまいますし、それはしょうがないと思います。


一方で中国も反撃。これもこちらのニュースで伝えられていますが、元カナダ外交官のMichael Kovrigさんが中国で身柄を拘束されています。ただし、現時点でこれが今回のファーウェイ事件と関わりがあるのか、カナダ政府ははっきりとはさせていません。この辺りはいわゆる「大人の対応」なんでしょうね。


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(中国で身柄を拘束されているMichaelさん。CBCニュースサイトより。)

また一方でバンクーバーの裁判所前にはたくさんの中国人および中国系カナダ人がMengさんの釈放を求めて抗議をしていました。

詳しくはこちらを:http://www.cbc.ca/player/play/1394276931867/


さらにこれはカナダ国内の中国人だけではないでしょうが、カナダの有名アパレルブランド・カナダグースのボイコットを始めているようです、中国人の間で。


カナダは中国人からしても人気の国ですし、沢山の中国人が帰化したり移民したりしています。ただ今回の件に関しては、元々アジア系の進出が桁外れに多く、不満を持っている地元民がさらに「アジア系を嫌い」になることになるかも。厳密には「中国」を嫌うことになるでしょうが、見た目からは判断できないためアジア系全体に不満が集まってくるかも・・・。


さあ、これに対してトルドーさんがどういう反応に出ますかね。ほんの2,3カ月前には、サウジアラビア国内の人権問題への発言等でサウジアラビアとの関係が悪化し、カナダに投下された資本の撤収・サウジアラビア人留学生の一斉帰国などの反撃にあいましたが、(裏ではわかりませんが)表面上カナダはそういった対抗措置をされてもサウジアラビアに対して音を上げることをしていません。


同じことを中国相手にもトルドー首相ができるのか、注目ですね。はっきり言ってカナダはかなり中国系の浸食と言ってはおかしいですが、沢山の中国系カナダ人、永住権保持者がいます。諸刃の剣になりますが、もし彼らがカナダ政府に対して抗議に動いたら、カナダはちょっと混乱状況になるでしょう。が一方で、カナダ人の中でも中国系に対して危機感・不安感を持つようになると思います。


いくら「人権大好き・注目集めるの大好き」のトルドー首相でも、今回のケースにおいてはアメリカと共同歩調をとるような気がします。つまり、米中経済戦争に意図せずにカナダも組み込まれる・巻き込まれる気がします・・・。


今回のケースはやっぱりちょっと中国側が先走った感があると言うか、「自分たちは強いので何をやっても相手側が折れるだろう」という誤った認識があった気がします。と言うのは、中国政府がよくやる手ですが、「報復的な身柄拘束」。これ日中間で問題がある場合もよくされていましたよね。日本の外交は昔から中国には弱いところがあるので、これは日本には有効な手だったんでしょうが、海外、特に欧米に対してはこれは逆に相手を怒らせる手だと思います。こういうことをされて、欧米はまず「引く」ことがないから。それは、例えば海外で起こった人質事件等で、アメリカや欧米各国は毅然とした態度を犯人に見せますよね。それと同じで、今回の件に対してはカナダも一歩も引かないでしょうし(逆に引いてしまうと、トルドー政権はもう本当におしまいになるでしょう)、「引く・落としどころを見つける」と言う「政治決着」の可能性を、中国自身がつぶした感じがするんですよね・・・・


ニュース記事へのコメントを見ても、結構中国非難のコメントが多いんです、それに「賛成」をつけている人たちも。。やっぱり潜在的な「中華系に対する不安感・恐怖」を持っていたのが、今回の件で火を噴きつつある感じ。


本当、まだまだ目が離せませんね、この事件からは!









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