以前のブログ・「バンクーバーのマネーロンダリング啓発に中華系ギャングがポスターに。」でご紹介した、中華系ギャングメンバーのKwok Chung Tam(現在61歳)。実は彼、カナダ連邦警察によリ逮捕され、次々と罪が明らかになりながら、ここ20年以上も「合法的」にカナダに滞在し、強制送還を免れているんです。それはいったいなぜでしょうか??

Kwok JUN022019 01
(中国政府発行のTamに関する書類。Global Newsサイトより。)

彼は1988年にカナダ・バンクーバーに入っているんですが、その際も「中国の民主化運動に加担したから、中国に帰されたら殺される」等の理由で「難民申請」を行ったんです。彼の言葉によれば、彼は中国で工場を経営し、そこで反共産党運動の支援を行っていた、と。それにより中国当局に目を付けられたので、カナダに難民申請をした、と。


でもその後、難民申請審理中に彼はバンクーバーの中華系コミュニティーに対しての強盗・不法侵入等の犯罪に手を貸した、となっています。しかしながらなぜか彼はこの件では逮捕・起訴されていません。何故なんでしょうかね・・・。

Kwok JUN022019 02
(中国政府発行のパスポート。Global Newsサイトより。)

が、カナダの移民局はこの件でTamと彼の妻に最初の「強制送還」命令を出しているんです。それは1993年のこと。ただし、彼の難民申請が審理中であったので、その審理が住むまではカナダに滞在してよい、ともなっていました。多分ここが問題でしょうね。難民申請中であれどうであれ、犯罪が発覚し確定した時点で難民申請を自動で却下し、強制送還すべきだったと思います。でないと「類似犯」が出てくるから。と言うより、もうたくさん出ているでしょうね・・。


が、1996年、ようやく彼の難民申請が却下されます。その後Tamは別の申請をして何とかカナダに残ろうとしますが、この申請も却下。そして1998年、中国政府からTamの強制送還を認める旨の通知がカナダに届きます。


更に上記期間、バンクーバー市警察はTamのバーナービーにある自宅において、ヘロインや20万ドル(約1,600万円)相当の白紙小切手、自動小銃などを押収します。

Kwok JUN022019 03
(現在のTam。Global Newsサイトより。)

実はこの件での逮捕、裁判が遅れに遅れて、現在まで「強制送還」が行われていないんだそうです。彼の弁護士が、Tamの「違法行為」をすべて否定していることも裁判の長期化の一因でしょう。


更に上記期間中、及びその後にもTamはヘロインの密輸などの犯罪行為を行っていたそうなんです。


こういった状況にも関わらず・・・・、Tamはなんと「人道的理由から」カナダに合法的に滞在できるシステムの一次審査を通過してしまったんです、それが2004年のこと。つまり、カナダの移民局はTamの強制送還の準備を進め、中国政府とのやり取りも進めていたにも関わらず、一方でTamのカナダ滞在を認める動きが出てきたんです。


まあこの「不一致」は大問題だと思いますが、その後もバンクーバー市警察や連邦警察はTamの近辺の調査を続行し、その後も彼の犯罪行為が次々に明らかになっていきます。例えば、ドラッグの密造・販売などなど・・。2010年、この件で再逮捕・裁判等が行われ、またしても強制送還できない状態に。


その後はTamの永住権申請の却下、Tamの弁護士が連邦裁判所に上告するなどの動きがあって、現在までカナダ・バンクーバーに滞在しているんですって・・・。



これって制度・システムそのものに欠陥がある証拠だと思います。つまり、

1. 難民申請中は強制送還されない。
2. 逮捕されても、保釈されれば、その裁判が結審するまではカナダに合法的に滞在できる。
3. 裁判結審後、次々に別の裁判(つまり次々に犯罪を起こせば)を起こせば、その期間だけカナダに滞在できる。


やっぱり私には法の「欠陥」があるようにしか見えません・・・。


日本でもこういう事態がないように、しっかりとその辺りをチェックして欲しいものです・・。







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