先週月曜日のカナダの総選挙。悲喜こもごもの結果となったと思いますが、とりあえずカナダ国民は現状の「リベラル・左派」政権を今後4年間続けてほしい、っていう意思表示をしたと思います。ただ、与党リベラル党も選挙後20議席を失い、過半数割れを起こしておりますので、その部分を「批判」としてきちんと受け止められるのか、そこが今後の重要なところだと思います。

Election OCT272019 01
(選挙も終わり、ラグビーのように”ノーサイド”になれるか??Global Newsサイトより。)

ただ、選挙後のトルドーさんの発言を聞いていると、とても「批判を受け止める」「反省している」とは思えず、リベラル党が支持されたという点のみ強調しています。なので、今後も自分のやりたいように、「特定の少数派」のためだけに動く政権になりそう・・・。さらに過半数割れを起こしたことで、今後法案等を通すためには同じ左派でも急進的なNDPと協力するしかなく、結果「左派・リベラル」的な行動に拍車がかかる可能性も大きいと思います。


一方の保守党。選挙前より議席を20議席以上伸ばして躍進は見せましたが、政権交代にまでは至りませんでした。トルドー政権には嫌気がさしている有権者も、保守党の方針(例えば、人工中絶の反対など)に不安を覚えて、「よりましな方」と言う選択でリベラル党に逃げていったのかも。


逆に大躍進を見せたのが、ケベック州の権利を保護・主張するための政党であるブロック・ケベコワ。こちらも20議席以上伸ばして、第三党に躍進。この躍進の背景にも実はトルドー政権への批判が含まれていると思います。寛容と言うより、法を無視したというかルール無視の不法入国者の保護などに対して、危機感を持った有権者がブロック・ケベコワに投票したようなんです。大都市であるモントリオールではリベラル党が勝利を収めましたが、その他の地域ではブロック・ケベコワが勝利し、結果ケベック州の獲得議席数は32議席同士。


まあ結果だけ見ると、おおざっぱに言って「左派(リベラル党・NDP)が議席を減らし、右派(保守党・ブロック・ケベコワ)がその分議席を伸ばした」形になり、でも「保守党よりはリベラル党がまし」と言う感じでリベラル党がどうにか勝利した、と言った具合でしょうか。


でもこれからリベラル党は大変でしょうね。今回の選挙で西部アルバータ州は全域ほぼ保守党が勝利。今回のリベラル党の第一党維持に大変不満を持っており、何らかのアクションが起こるかも。すでにWexit運動(イギリスのBrexitにかけて、カナダ西部をカナダ連邦から独立させようっていう運動)も盛り上がっているようですしね。分離・独立運動の元祖であるケベック州でもブロック・ケベコワが躍進したように、西部州でも分離・独立運動が盛り上がるかも?!それくらい、連邦政府(トルドー政権)と州政府の関係は悪いんです。。


ケベック州もそう。いくらトルドー首相の地元とは言え、「多様性」と言う言葉遊びを利用して、地元住民・既得権益者を「強制的になんでも受け入れるようにする」方針を推し進めるトルドー政権との関係は良くありません。当ブログでも紹介した、ケベック州の政教分離策。トルドー首相はこれに口を出す意向を示していますが、もしそんなことを本当にすれば、ブロック・ケベコワがまず連邦議会で反対するでしょうし、ケベック州政府も頑強に抵抗するでしょう。同じことは上記アルバータ州にも言えます。アルバータ州は石油産業で大きくなった州で、現在西部から東部へ石油パイプラインを通そうとしていますが、これを東部のケベック州が拒否。連邦政府もこのパイプラインを支持していますが、一向にらちが明かずにアルバータ州は不満を抱えています。


そもそもこのパイプライン構想、「環境問題」が大好きなリベラル党の方針と矛盾しており、そこも突っ込まれるところになりそう。


ともあれ、この選挙後、トルドーさんは「カナダは一つになって前に進める」的なことを言っていましたが、現実はトルドー政権の政策により、連邦政府対州政府、地元民対移民、西部州対東部州など、「対立軸」だけが増えていったような気がします。


今後この対立が緩和されるかどうかが腕の見せ所でしょうが、トルドーさんはそんなこと気にしないで自分の思うことを進めそう・・。うーん、今後4年間、どうなるんでしょうね・・・。








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